「運動」の効果が神格化されすぎているのではないかという話
おそらく、10年ほど前だと思うのですが、
「脳を鍛えるには運動しかない」という本が出版されました。
今でこそ、「運動」の効果について、身体的・精神的メリットについて解説する本はたくさんありますが、当時は「運動」が脳に作用して、脳の働きがよくなったり、メンタル面にも良い影響を与えるということについて、今ほど周知されていなかったように思います。
確かに、運動することで良い影響を与えるのは事実だと思います。
私自身、この本を読んでから、色々なスポーツや筋トレをしてみたり、またここ5年ほどはプライベートのほとんどを捧げるくらいに、登山やクライミングにのめり込むほど、運動することが生活に根付いていました。
ですが、近年の「運動が全てを解決する」とでも言わんばかりの、運動に対する効果を謳った内容の本が多く出版されていることに関しては、少し疑問を抱いています。
実体験からも、運動には多くのメリットがあることは体験していますが、決して全てを解決できるほどの「万能薬」ではないと感じています。
「運動する」ということは、自律神経でいうところの交感神経を少なからず刺激することになります。
自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスをとることでうまく機能するように出来ていますが、現代人はこのバランスが上手く機能せず、交感神経が優位に働いてしまう機会のほうが多いといえます。この状態が長く続いてしまうことで、自律神経の調節機能が上手く働かなくなり、いわゆる自律神経失調症などの症状を招いてしまうことになります。
運動するということは、この交感神経が働く時間を増やしてしまうことになり、その状態が慢性化すれば、いずれは運動のメリットを凌駕してしまい、身体的・精神的不調を引き起こすきっかけにさえなりかねないと考えています。
いわゆる「燃え尽き症候群」等はその典型的な例だと言えると思います。
以上は私自身、体調を壊してしまったことからの考えで経験則にすぎないのですが、「運動が全てを解決する」といった内容の本が多く世に出回ってしまっていることは、そうした危険も生んでしまっているのではないかと思います。
人間はそれほど単純には出来ていないってことですね。
個人的には、運動をするのなら、副交感神経にいい影響を与えるような活動と組み合わせたほうがよいと思います。
わかりやすいところだと、瞑想とかマインドフルネスといった活動でしょうか。
実際、運動と瞑想を組み合わせる「M&Aトレーニング」といったものもあったりして、特にメンタル面への作用が大きいようですが、その背景には交感・副交感神経の両方に作用を与える活動でバランスがよいことからだったりするのではないかと考えています。
つくづく思うのですが、これだけやっておけばうまくいくから大丈夫みたい話は、一度疑った見方をしてみて本当にそうなのか考える必要があると思います。
どんな物事にも、メリットだけではなく、デメリットも存在するということを肝に銘じていく必要があるのかなと思います。